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素読のすすめ

平成29年12月1日
素読のすすめ 四字熟語から名詩名文を訪ねる
第9回 『文武両道』ぶんぶりょうどう

「文」と「武」との両方に優れていること
知識や教養の面(文)と、体力や武道(スポーツ)の面(武)とを兼ね備えた人についていう。
()曹操(そうそう)(たた)える宋の蘇東坡(軾)の詩「赤壁の賦」に「(ほこ)を横たえて詩を()す。まことに一世の雄なり」。がある

楽しい素読

   短歌行(たんかこう) 〔()曹操(そうそう)
(さけ)(たい)して(まさ)(うた)ふべし、人生幾何(じんせいいくばく)(たと)へは朝露(ちょうろ)のごとし 去日(きょじつ)(はなは)(おお)
(がい)して(まさ)(もつ)(こう)すべし憂思(ゆうし)(わす)(がた)(なに)(もつ)(うれ)いを()かん()杜康(とこう)()るのみ

大意
酒に向かえば、大いに歌うべきである。人の一生は、いったいどれだけ(の長さが)あるというのか。たとえば(それは)朝露のような(はかない)ものなのだ。(すでに)過ぎ去った月日はきわめて多い。(それを思えば)嘆き悲しんで、さらに大いに心高ぶり嘆くばかりである。(その)深い憂いは、除き難いのだ。いったい、どのようにして憂いを除いたらよいのか。ただ酒があるばかり(であり、それに向かって歌うばかり)である。

青青(せいせい)たる()(きん) 悠悠(ゆうゆう)たる()(こころ) ()(きみ)(ため)(ゆえ)に 沈吟(ちんぎん)して(いま)(いた)れり 呦呦(ゆうゆう)鹿(しか)()き ()(よもぎ)()らふ (われ)嘉賓(かひん)()らば (しつ)()(しょう)()かん

大意
青青とした君の(着物の)襟、(その君を慕う)はるかなわが思いとただひとえに(若い才能のある)君を求めるがために、深く思い沈んで今に至っているのだ。(また、)鹿が友を呼んで鳴き、野のよもぎを食べている。私に(それに似た)よい客が来たならば、瑟をひき、(ふえ)を吹こう(もてなすことにしよう)。

明明(めいめい)として(つき)のごとし (いづ)れの(とき)()る (うれ)ひは(うち)より()たり 断絶(だんぜつ)すべからず
(はく)()(せん)(わた)り ()げて(もつ)相存(あひそん)すれば 契闊談讌(けいかつだんえん)して (こころ)旧恩(きゅうおん)(おも)はん

大意
(しかし)明るい月のような光(を放つ人材)は、いつになったら選び取ることができようか(賢才にめぐりあえぬ)。憂いが心の中からわいて来て、断ち切ることができない。
東西に走る道を越え、南北の小道をわたって、わざわざ訪れる(人がある)ならば、固い交わりを結んで、くつろいで語り合い、心(の中深く)に、昔からのよしみを(忘れまいと)思おう。

月明(つきあき)らかに星稀(ほしまれ)に 烏鵲(うじゃく)(みなみ)()ぶ ()(めぐ)ること三匝(さんそう) (いづ)れの(えだ)にか()るべき
(やま)(たか)きを(いと)はず (うみ)(ふか)きを(いと)はず 周公(しゅうこう)()()きて 天下(てんか)(こころ)()せり

大意
(折しも)月の光がさえわたり、星の光がまばらとなる中を、かささぎが南に向かって飛んでゆくようす(それは、今天下安定のさまに似ている)。高い樹木を三度も(飛び)回って、どの枝に身を寄せようかと迷っているようす(それは、世の賢才たちが、どこに身を寄せるべきかに迷っているさまに似ている)。
山は高くなることを避けきらうことなく、海は深くなることを避けきらうことはない(あくまでも高く、深くなることを願うものだ)。(昔、あの)周公は(天下の賢才を失うことを恐れて)一食の中に何回も、口中の食物を吐いて、人に接し、世の人々の心は、すべて周公に従った(というではないか。まずはその周公を見習いたいものだ。)

鑑賞
日月の過ぎ去ることの速さを嘆き、それにつけても天下の英才を得て魏の国の隆盛を期したいとする「文武両道」を兼ねた英雄曹操の気概面目躍如たるものがある詩です。